介護職員の日記
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映画ロストケアを観て介護職員として思ったことは

hisashi_kaigo
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正直あまり書きたくないのだけど、

なんでかっていうと、悲惨だし暗いから。

でも、現役の介護職員が観た映画の感想はあってもいいのではと思ったので書いてみようと思う。

ちなみに、あらすじやネタバレになるようなことは書きません。あくまで観終わった感想をぼんやり書いていくだけです。

のざき寿(ひさし)
のざき寿(ひさし)
デイサービス介護職員
Profile
デイサービスの介護職員として働く、元よしもとの元お笑い芸人。40代・母70代、実家暮らし。母の介護を見据えて介護職へ転職。
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介護職員が観るロストケアはリアルなのか?

もちろんフィクションです。あくまで映画、エンタメですから。

サスペンスでありミステリー要素がないと、映画としては面白くないという。そのような感じでちょと引いて見ていました。事件の内容とか犯行に及んだ犯人の人物像にはリアリティーを感じなかったですが、

とはいえ、

認知症介護や在宅介護の辛さや葛藤・苦悩に関してはリアルな部分もあった。という感じでしょうか。

介護職員としては引いてみることができるのですが、介護を経験していない人にとっては「リアル」を勘違いしないかと、ちょっと怖くなりましたかねぇ。

世の中では実際に、介護者による悲惨な結末っていうのはあるわけですから。

原作者の方も介護経験者

2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家デビュー。

ジョブメドレー

映画化が2023年だそうです。

原作を書かれた方は認知症介護・座卓介護の経験者だそうです。

だから単なるミステリーではなく、メッセージ性のある内容になっているんですね。まぁ介護という社会課題を題材にしているのですから、必然的にそうなるわけですね。

実際の介護者の声とは

ぼくはデイサービスで介護職員として働いています。

出勤の時はほぼ毎日、認知症の方と接しているのですが、

はっきり言って、大変です。

介護に慣れていて、介護現場で介護しやすい状態でさえ大変なのです。

在宅介護されているご家族の負担を考えたら、想像を絶する苦労があることは容易に想像できます。

認知症介護の会で介護者が語る本音

介護職の勉強として、地域で開催されている「認知症介護の会」に参加することがあります。

その会は、認知症介護をされている家族があつまって、情報交換や意見交換をする場所です。

介護をしている人しか集まっていなので、包み隠すことなく次々と本音が飛び出します。

「もう、ムカついたからお尻引っ叩いてやったわよ」

「徘徊するから部屋のドアには全部カギをつけるようにした」

「冷蔵庫を開けられると困るから、鍵をしてある」

「もう、わたしどうにかなりそうで。このまま一緒にいると酷いことしてしまいそうで」

「排尿とか排便とか、もう泣きながら掃除してる」

どんどん吐き出されます。

話すことで心が軽くなって笑う人もいれば、限界まで我慢していてやっと吐き出せた安堵感からか、嗚咽混じりで泣き出す方もいます。

この光景はまさに、映画ロストケアにあるシーンたちと重なるわけです。

決して誇張でもなんでもなく、認知症介護のリアルは描かれているのです。

マスコミ・メディアの影響力

介護イコール、どんなイメージを持っていますか?

3kなんて言われていますよね。「きつい」「きたない」「きけん」、それに加え労働環境が良くない・給料が安いなんてことも言われます。

こないだテレビを見ていて悲しくなりましたが、

介護にまつわるテレビのニュース

「〇〇県の〇〇施設で、介護職員が利用者さんに対し〜」

みたいな、悲惨なニュースが流れていました。

ローカル番組のニュースでしたが、ぼくの住んでいる地域とは関係のない介護施設のニュースです。

交通事故やそのほかの犯罪のニュースなら、割と聞き流せるのですが、介護のニュースとなるとやはり見入ってしまいます。

そのニュースが終わってCMに入りました。

保険のCMが流れました。

何が言いたいかというと、

凄惨なニュースを扱って不安を煽り、安心を売る商品の広告を流すという。介護の事件はそのように扱われているのです。

介護の事件は商品を売るために使いやすいと言っているのです。

なんか、悲しくなりましたね。そのイメージが国民感情にこびりついてネガティブなところにしか焦点が当たらなくなるってことが、ぼくは悔しくてしょうがありません。

ロストケアが論じること

映画ロストケアには「救済」があります。

救済されている家族。

救済を受けられなかった家族。

救済しようとして起こした行動。

救済をいろんな視点から見つめています。本当はみんな救いを求めているんです。でも、孤独な認知症介護は救済を求めることさえ難しい局面に追い込まれる現実があるのです。

それは、認知症の家族がいることを公表できない社会とか、

認知症そのものを理解できていない世の中とか。

そういったことも含まれているのだと思います。

事実ぼくは仕事として認知症介護をしていますが、以前は全く接点のない世界だったため、理解しようがなかったのです。

ロストケアを観てほしい

認知・啓蒙・問題提起などの意味においても、もちろんエンターテイメントにおいても、映画ロストケアは面白い作品でした。

セリフ・構成、素晴らしかったし。

役者さんそれぞれの演技が凄まじかったです。鳥肌立ちまくりました。

結果、こころに残る映画でした。観てよかったです。

介護の面白さを伝えていきたい

そしてぼくは、介護職員に戻るわけですが、

介護ってたのしいです。

車椅子を使ってしか移動できなかった利用者さんがですね、短い距離の歩行訓練を重ねてリハビリを頑張って、しまいには散歩や買い物にいけるまでになったりとか。ご家族と旅行に行けるようになったりとか。

なくなる直前まで、デイサービスに来てくれて。

「あなたの顔が見れてよかった」と言われてみてください。そりゃ嬉しいですよ。感動しますよ。

うんちやおしっこの世話だけじゃないんです。

生かすこと・活かすことが介護職員の役割でもあるのです。その人の生きる目的になることだってあるのです。クリエイティブなんです。

どうか、介護には、太陽のように明るいニュースもあるってことを、

ぼくはもっと多くの方に知ってほしい。そう思っています。

うまく語れなくてごめんなさい。映画楽しかったです。

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